BCP-事業継続計画
BCP(事業継続計画)とは
95年阪神・淡路大震災、07年新潟中越沖大震災等、過去の大震災において被災地の工場が生産及び部品供給の停止状態に追い込まれ、関連会社に大きな影響を与えました。
また2011年3月11日に東日本大震災において、自動車部品、石油化学製品等多業種にわたる製造業が被災し、発生から数ヶ月が経過してもサプライチェーンの混乱は続いておりました。
BCP(Business Continuity Plan):事業継続計画
企業が事業を継続するうえで基本となる計画のことです。
災害や事故など不測事態の発生により、限られた経営資源で最低限の事業活動を継続、または目標復旧時間以内に再開できるようにするために、事前に策定される行動計画になります。
BCPの策定では、起こりうるリスクを洗い出し、復旧すべき業務と必要な設備やシステムを明確にして、目標復旧時間の設定や復旧手順を計画していきます。
BCPにおける工場の安全対策
BCPの一環として
「天井クレーンは落下しない!」
そう考えられていた事業主様が以前は多かったのが現状でした。
震災後はBCPの策定の中で天井クレーンに脱輪・落下防止対策をとって、安全対策を重視しています。
工場内設備に対する安全対策
BCP策定において工場内の設備や、作業員に対する安全対策(避難場所の確保)として、様々な対策が取られています。
地震災害対応シナリオ
平常期 | ■危機管理計画策定…BCP構築運用など ■事前対策…耐震診断・耐震対策など ■危機管理意識向上…最新の地震被害情報など ■訓練…耐震基準の訓練 |
警戒期 | ■危機の早期把握 ■注意情報、警戒宣言周知 ■予防対策 ■安全な避難 |
初動期 | ■初動体制の構築 ■緊急連絡 |
緊急対応期 | ■被害状況把握…生産工場のハザードマップの構築 ■避難・安否確認…救命・救助・消火・二次災害防止 |
復旧期 | ■地域の復旧 ■施設の復旧 ■物流・調達の確保 ■被災社員・家族の支援 |
業務再開 | ■生産の再開…代替を含む ■社員・家族の生活再建支援 ■関係会社の生産再開支援 |
中小企業が地震災害に遭遇したケースの仮想シナリオ
1中小企業が地震災害に遭遇したケ
BCP導入なし企業 | BCP導入済み企業 | |
設定 | ●自動車用部品などのプレスメーカー(従業員50名) | |
当日 | ●工場では全てのプレス機が転倒 ●ほとんどの従業員の安否確認ができず ●納入先に連絡するが電話が通じず、その後、後片付けに追われ納入先に連絡出来ない |
●工事ではほとんどの設備をアンカーで固定していた為転倒は免れる ●伝言ダイヤル171で、大半の従業員の安否確認が出来る。伝言のない者については、近所に住む従業員が自宅まで様子を見に行かせる ●納入先に連絡するが電話が通じない為、最寄りの営業所まで従業員1人をバイクで事情説明に行かせる |
数日間 | ●従業員は家族の被害や地域活動の為半数が一ヶ月間出社せず ●原材料の仕入元会社の工場が全壊、代替調達の目処がたたず ●一週間後、納入先の企業から発注を他社に切り替えたとの連絡が入る |
●従業員に対して日頃、耐震診断済みのアパートに住むように指導していたので家族の被災を免れる ●大半の従業員が、3日間は地域活動に専念、その後1ヵ月は2/3が出社するよう交代制をとる ●中核事業である自動車用部品の生産復旧に最優先で取り組む ●原材料の仕入先会社の工場が全壊するが、予め話をつけていた会社から当面の代替調達を行う ●プレス機械調整の為、協定通りメーカーから技術者を受け入れる |
数ヶ月間 | ●3ヶ月後、生産設備は復旧するも、受注は戻らず ●プレス機の更新の為、金融機関から融資をうける ●会社の規模を縮小、従業員の7割を解雇 | ●手持ち資金により、従業員の月給、仕入品の支払いを行う ●同業組合から、復旧要員の応援を得る ●1ヶ月後、全面復旧し、受注も元に戻る ●破損した一部設備の更新は地震保険でカバー ●被災後、納入先の信用を得て、受注が拡大 |
地震災害は、そのインパクトこそ大きいものの発生頻度が低いことや、被災経験のある企業においては、被害に関する情報は、株価に影響を与えるなど、その性質上公開することは難しい。
被災未経験企業が地震災害対策を講ずるに当たり、参考となる過去の事例の取得は困難であり、どのような方法・手段で、どの程度コストをかけるべきなのかが、漠然としていることが、効果的な地震災害対策の障害となっている。
そこで最新の地震被害状況と生産設備の耐震診断結果から明らかとなった、特徴と傾向を報告することは、潜在的にあるリスクをより深く理解できると同時に、事業継続管理の実施・運用する際の参考として用いることで、事前に効果的に地震災害対策に助力するものと考えています。